8月22日・23日に開催した、ドイツ・チャレンジツアー第3期トライアウト。
今回、私がとても楽しみにしていた選手が一人いました。
昨年も、チャレンジツアーのトライアウトに挑戦してくれた選手です。
結果は、落選でした。
あれから一年。
もう一度、同じ場所に挑戦しに来てくれました。
そして今年、彼はチャレンジツアー第3期のメンバーに選ばれました。
でも、今回伝えたいのは「去年落ちた選手が今年は受かった」という話だけではありません。
この一年で彼が積み重ねてきたものと、環境が変わることで見つかった新しい可能性。
そこに、育成年代の選手を見るうえで大切なことが詰まっているように感じました。
一年前、何もできないまま終わったトライアウト

昨年のトライアウト。
初めての環境、知らない選手たち、周囲のレベル。
その雰囲気に圧倒され、本来持っている力をほとんど出せないまま終わりました。
結果は落選。
でも、一年前の結果が、その選手の未来まで決めるわけではありませんでした。
毎食2合。10kg増やした身体
そこから彼は身体づくりに取り組みました。
食事から見直し、毎食どんぶりで約2合のご飯。
「食べることもトレーニング」と考え、継続しました。
その結果、この一年で体重を約10kg増やしました。
さらに体幹トレーニングも一年間継続。
ただ、その努力がすぐに分かりやすい結果につながったわけではありません。
それでも結果が出ない
所属チームではチーム事情もあり、必ずしも本人の適性に合ったポジションでプレーできていたわけではありませんでした。
思い描いていたような中学校最後のシーズンにはならず、チームでの活動を終えました。
さらに京都選抜の選考会にも挑戦しましたが、結果は落選。
昨年のチャレンジツアーも落選。
選抜も落選。
努力しているからといって、すぐに結果が返ってくるとは限りません。
それでも彼は、
「ドイツへ挑戦したい」
という気持ちをもう一度思い出し、今年のトライアウトへやってきました。
未経験のポジションへ

今回、彼にはこれまで経験したことのないポストというポジションに挑戦してもらいました。
すると、これまで見えていなかった良さが出てきました。
一年かけて大きくした身体。
相手と接触しても負けない強さ。
身体を張ってスペースをつくるプレー。
ゴールへ向かう力。
2日目の高校生とのトレーニングマッチでは、身体をぶつけられ、倒れ込みながらもシュートを決める場面もありました。
さらに印象的だったのは、自分のプレーだけではありません。
仲間へ積極的に声をかける。
良いプレーを盛り上げる。
チームの雰囲気をつくる。
一年前、周囲の雰囲気に圧倒されていた選手が、一年後には周囲へ声をかける側になっていました。
見ていて、本当に嬉しかったです。
「続けることに意味があるもんなんやなぁ」
トライアウト終了後、お母さまからメールをいただきました。
結果を伝える前から、帰宅した本人の様子を見て、
「結果の如何に関わらず充実した2日間だったんだなぁと伝わってきました。」
と感じていたそうです。
そして何より本人が喜んでいたのが、合格だけではなく、
「成長した」
と私から伝えられたことだったそうです。
そのメールの最後に、本人が家で話していた言葉が書かれていました。
「1年間体幹トレーニングを続けてきたことが、まさかポストプレーに活かせるとは思ってなかったけど、続けることに意味があるもんなんやなぁ」
この言葉が、とても印象に残りました。
一年間続けてきた体幹トレーニングは、「ポストになるため」にやっていたものではありません。
毎食2合のご飯を食べて10kg増やしたことも、その時点では今回のプレーにつながると分かっていたわけではありません。
でも、積み重ねてきたものが、新しい環境、新しいポジションに出会ったときにつながった。
努力の意味は、努力しているその瞬間には分からないことがあります。
一年前の「落選」は、答えではなかった

もし昨年の落選で、
「自分にはドイツなんて無理だ」
と諦めていたら。
今回の姿を見ることはありませんでした。
10kg増やした身体も。
高校生相手に決めたシュートも。
仲間に声をかける姿も。
新しいポジションで見つかった可能性も。
そして、
「続けることに意味がある」
という本人自身の気づきもなかったかもしれません。
一度のトライアウト。
一度の選抜。
一度の大会。
そこで出た結果は、その時点での結果です。
育成年代の子どもたちは、そこから変わります。
身体が変わる。
技術が変わる。
考え方が変わる。
そして環境やポジションが変われば、それまで見えていなかった才能が表に出ることもあります。
合格は、この物語のゴールではない
今回、彼はチャレンジツアー第3期のメンバーに選ばれました。
一年前の落選から考えれば、一つの結果が出たことは本当に嬉しく思います。
でも、ここをゴールにはしてほしくありません。
今度はドイツです。
日本では通用した身体の強さが、ドイツでは通用しないかもしれない。
新しいポジションでも、まだまだ知らないことがたくさんある。
また壁にぶつかるでしょう。
でも、一年前とは違います。
彼はもう、
続けてきたことが、いつか違う形でつながることがある
と知っています。
これが、GlobeHand Projectでつくりたいもの
全国大会や選抜を目指して努力することには、大きな価値があります。
でも、それだけが子どもたちの可能性を測る物差しではありません。
選抜に落ちた。
チームで思うようにいかなかった。
今のポジションでは評価されなかった。
トライアウトに落ちた。
それでも、その子の可能性までなくなったわけではありません。
違う環境へ行ったら。
違う指導者と出会ったら。
違う仲間とプレーしたら。
違うポジションに挑戦したら。
今まで本人さえ知らなかった可能性が見つかることがあります。
GlobeHand Projectがつくりたいのは、「完成された強い選手だけを集める場所」ではありません。
世界を目指したい選手に、次の扉をつくること。
そして、その扉を開けた先で、
「自分には、こんな可能性もあったんだ」
と気づく機会をつくること。
一年前は落選。
一年後、もう一度挑戦して合格。
でも、一番嬉しかったのは、その結果だけではありません。
一年前には見ることのできなかった姿を、本人も、家族も、私たちも見ることができたことです。
選ばれたから世界へ行くのではなく、世界を目指すから挑戦する。
そして挑戦を続けていれば、まだ知らない自分に出会うことがある。
今回の彼の姿は、まさにGlobeHand Projectがつくりたいものを見せてくれたように思います。
次は、ドイツでどんな姿を見せてくれるのか。
楽しみにしています。

