7月に開催した「ドイツ・ハンドボールサマーキャンプ2026」。
全国から32名の中学生が集まり、ドイツから来日したヴェリミール・ペトコビッチ氏、スタニスラフ・ツイコフ氏のもと、3日間のトレーニングを行いました。
キャンプ終了後、参加した選手や保護者の皆さんから、たくさんのメッセージをいただきました。
その中に、こんな言葉がありました。
「思っていた以上の学びや経験をすることができ、サマーキャンプから戻ってから1週間、毎日の様に子供と『本当に行けて良かったね』と話しています。」
そして、この選手にとって今回のサマーキャンプには、特別な意味がありました。
目標にしていた最後の大会。その2日前に起きた怪我
中学校最後の夏。
近畿大会出場を目標に、キャプテン、そしてエースとしてチームをまとめてきた選手でした。
チームメイトと自主練習を重ね、市大会、県大会を勝ち上がり、近畿大会へ。
親子ともに「これ以上後悔はない」と思えるほど準備してきたそうです。
ところが、市大会の2日前。
靭帯を損傷しました。
本人は、
「足を固定してでも試合に出たい」
と訴えたそうです。
しかし、医師からはストップ。
今後の選手生命も考え、市大会は仲間に託し、2週間後の県大会で復帰することを目指しました。
ところが、その市大会でチームは敗退。
最後の大会で一度もコートに立つことができないまま、中学校での大会を終えることになりました。
保護者の方は、
「こんな辛いことがあるのかと、本当に親子共々に泣きました。」
と振り返っています。
それでも残った「チーム」という宝物
ただ、その経験ですべてを失ったわけではありませんでした。
春まではバラバラだったというチーム。
近畿大会という一つの目標に向かって自主練習を重ねる中で、少しずつ一つになっていきました。
そして怪我で試合に出られなくなったキャプテンに、後輩たちは、
「もっと一緒にハンドがしたいから引退なんてさせない!」
そんな思いで試合に臨んでくれたそうです。
結果として試合には敗れました。
でも、保護者の方は息子さんにこう伝えています。
「引退試合に出れなかった悔しさはきっと先で、あの経験があったから今がある、と言える時がくる。」
そして、
「試合に勝つ以上の、チーム力という最高の宝を得ることができたこと、またそのチームを一つにするために直向きに頑張ってきた頑張りを、私は親として誇りに思う!」
勝ったか、負けたか。
試合に出られたか、出られなかったか。
スポーツをしていれば、どうしても結果はついてきます。
でも、その結果だけでは測れないものも、スポーツの中には確かにあります。
次の目標が「サマーキャンプ」になった
大会が終わった2日後。
待っていたのが、GlobeHand Projectのサマーキャンプでした。
怪我から19日目。
なんとか走れるところまで身体を戻し、このキャンプで怪我後初めて本格的にハンドボールをしました。

保護者の方は、そのときの様子をこう書いてくださいました。
「ハンドができることが本当に嬉しく、また、最高の指導者の指導を受けることができ、志が同じ仲間とハンドができることを心から喜び楽しんでいました!」
全国から集まった、普段は一緒にプレーすることのない仲間。
ドイツからやってきた指導者。
いつもとは違うトレーニング。
そして、もう一度大好きなハンドボールができる喜び。
大会に出られなかった悔しさを抱えながら参加した3日間が、少しずつ「次」へ向かう時間になっていきました。
そして、MVPに
3日間の最後。
この選手は、サマーキャンプのMVPに選ばれました。

MVPには、次回のドイツ・チャレンジツアーへ挑戦する機会が与えられます。
本人にとって、ドイツへの挑戦は以前から目標にしていたことでした。
保護者の方から届いたメールには、
「本当に喜び、今からその遠征でより多くのものを掴んできたい!と気持ちが昂ぶっています。」
とありました。
そして、帰り道。
本人が口にした言葉が、とても印象に残っています。
「県大会に出れなかった悔しさを消すほど嬉しい!」
もちろん、出られなかった最後の大会がなかったことになるわけではありません。
怪我をした経験も、悔しくて泣いた時間も消えません。
でも、その先に新しい目標ができた。
今度は「ドイツ」という世界が待っています。
3日間で選手を完成させることはできない
サマーキャンプは、たった3日間です。
3日間でハンドボール選手として完成することなどありません。
技術が劇的に変わるわけでもありません。
だから、このキャンプの価値を、
「どれだけ上手くなったか」
だけで測る必要はないと思っています。
知らない仲間と出会う。
世界で戦ってきた指導者と出会う。
今まで知らなかったハンドボールを知る。
そして、自分の次の目標を見つける。
環境が変わることで、子どもの中に何かが生まれることがあります。
今回のメールの最後には、こんな言葉がありました。
「今回のサマーキャンプは、本当に宝の様な経験でした!!」
主催者として、これ以上嬉しい言葉はありません。

「世界」は、一部の選手だけのものではない
今回MVPになった選手には、これからドイツでの新しい挑戦が待っています。
でも、今回伝えたいのは「MVPになった」という結果だけではありません。
怪我をした。
最後の大会に出られなかった。
泣いた。
それでも、次の場所へ行ってみた。
そこで新しい仲間と出会った。
ハンドボールを楽しんだ。
そして、新しい目標ができた。
子どもたちの成長は、一直線ではありません。
上手くいくこともあれば、上手くいかないこともあります。
だからこそ私たちは、今の結果だけで可能性を決めたくありません。
選ばれたから世界へ行くのではなく、世界を目指すから挑戦する。
全国大会、選抜、所属チーム。
それとは別に、
「世界を見てみたい」
と思った子どもが一歩を踏み出せる道があってもいい。
今回のサマーキャンプで生まれた新しい目標が、これからどんな未来につながっていくのか。
私たちも楽しみにしています。

