「日本人選手は、テクニックがないのか?」
海外のハンドボールを見ていると、そんな疑問を持つことがあります。
日本人選手は、パスやシュート、フェイントなど、細かな技術を丁寧に練習している選手も少なくありません。
それなのに、海外の選手と対戦すると、普段できているプレーができなくなることがあります。
なぜでしょうか。
以前、ドイツの指導者スタンコと日本人選手について話していたとき、改めて考えさせられたことがありました。
問題は、技術があるかないかだけではない。激しい身体接触の中で、その技術を発揮できるかどうか。
今回は、海外で通用する技術とは何なのか、そして若い年代から世界のハンドボールを経験する意味について考えてみたいと思います。
目次
- 日本人選手は本当にテクニックがないのか?
- コンタクトが加わると、同じ技術でも難しさが変わる
- 日本と海外では審判の基準も違う
- コンタクトのない練習だけでは身につかないもの
- 10代から世界の強度を経験する意味
- 世界で使える技術を育てるために
日本人選手は本当にテクニックがないのか?

最初にお伝えしたいのは、日本人選手に技術がないと決めつけるつもりはない、ということです。
日本には、ボールを扱う技術が高く、細かなフェイントや正確なパス、さまざまなシュート技術を持つ選手がいます。
しかし、海外で求められるのは、技術をきれいに実行できることだけではありません。
相手ディフェンスが身体を寄せてくる。
腕や身体に強い接触を受ける。
十分なスペースも時間も与えてもらえない。
そのような状況でも、パスを通し、シュートを打ち、判断を変えられるか。
技術を持っていることと、その技術を試合の強度の中で使えることは、同じではありません。
ここに、日本人選手が海外へ挑戦するうえで考えるべき重要なポイントがあると感じています。
コンタクトが加わると、同じ技術でも難しさが変わる

例えば、ディフェンスがいない状態で正確にパスを出せる選手がいたとします。
ところが、相手に身体を寄せられ、腕の自由を奪われ、バランスを崩されながら同じパスを出そうとすると、難易度は大きく変わります。
シュートも同じです。
十分な助走があり、身体のバランスが整っていれば強いシュートを打てる。
しかし、ディフェンスと接触しながら跳び、身体の向きを変え、限られた時間でゴールキーパーの動きを見てシュートを打つとなると、まったく違う能力が求められます。
重要なのは、単純な筋力や体格だけではありません。
- 接触を受けても姿勢やバランスを保つ
- 相手の力を感じながら身体を使う
- 狭いスペースで判断する
- 接触の瞬間にプレーを変える
- 強いプレッシャーの中でも正確にボールを扱う
こうした能力も含めて、実戦で使える技術なのだと思います。
日本と海外では審判の基準も違う

もう一つ、海外でプレーする際に大きな違いとして感じるのが、審判の判定です。
ハンドボールは、もともと身体接触が認められているスポーツです。
もちろん、危険な接触や不正なプレーは反則になります。
ただし、身体接触に対する判定の運用や、どこまでプレーを継続させるかという判断には、国や大会、カテゴリー、審判によって違いが見られます。
日本では反則になると思っていた接触でも、海外ではそのままプレーが続くことがあります。
そのときに、選手が「今のはファウルではないのか」とプレーを止めてしまったらどうなるでしょうか。
相手はその間もプレーを続けています。
世界で戦うためには、自分が慣れ親しんだ判定基準だけを前提にするのではなく、その試合の基準を理解し、適応する力も必要です。
これはルールを無視して強く当たればいい、という意味ではありません。
正しいルール理解を土台に、許される身体接触と危険な接触を区別しながら、実際の試合に適応するということです。
コンタクトのない練習だけでは身につかないもの

日本の育成年代でも、パス、シュート、フェイントなどを繰り返し練習します。
こうした基礎技術の習得は、もちろん大切です。
しかし、その技術を試合で使えるようにするには、練習の環境も考えなければなりません。
例えば、同じシュート練習でも、
- ディフェンスがいない状態でフォームや動きを習得する
- ディフェンスがいる状態でタイミングを判断する
- 身体接触を受けながらシュートする
- 試合に近い強度と時間的制約の中で判断する
というように、段階的に難易度を高めることができます。
コンタクトを避けた練習が悪いわけではありません。基礎を身につけるためには必要な段階です。
ただ、そこだけで終わってしまえば、実際の試合で使える技術にはつながりにくいでしょう。
また、育成年代では安全性や身体の発達段階への配慮も欠かせません。強い接触を無理に増やすのではなく、正しい身体の使い方を学びながら、少しずつ実戦に近づけることが大切です。
10代から世界の強度を経験する意味

では、日本国内でしっかり練習を積んでいれば、それだけで海外の強度に対応できるのでしょうか。
国内でも、実戦に近い強度で練習することは可能です。
しかし、実際に海外の選手と対戦することで初めて気づくこともあります。
相手の身体の使い方、大きさ・腕の長さが違う。
接触してくるタイミングが違う。
プレーを続ける強さが違う。
そして、審判がプレーを止める基準も違う。
こうした違いは、映像を見るだけでは十分に理解できないことがあります。
自分の身体で経験して初めて、「世界でプレーするためには何が必要なのか」が具体的になる。
GlobeHand ProjectのChallenge Tourでも、日本の選手たちがドイツの選手と同じコートに立つ機会を作ってきました。
そこで大切なのは、勝ったか負けたか、活躍できたかどうかだけではありません。
自分の技術がどこまで通用したのか。どんな場面でプレーが難しくなったのか。その違いを日本に持ち帰り、次の練習に生かせるか。
10代のうちにこうした経験を積むことは、その後の成長に向けた大きな財産になると考えています。
世界で使える技術を育てるために

今回のテーマは「日本人選手はテクニックがないのか?」でした。
私自身は、技術がないという単純な問題ではないと考えています。
大切なのは、習得した技術を、どのような環境で発揮できるかということです。
プレッシャーがない状態でできること。
相手がいる状態でできること。
そして、激しいコンタクトや国際的な試合の強度の中でもできること。
その間には、乗り越えなければならない段階があります。
だからこそ、若い年代から世界のハンドボールに触れる機会を作りたい。
海外の選手とプレーすることで、自分の現在地を知る。
そして日本に戻ってから、世界の基準を意識して練習する。
世界で戦うための準備は、世界を知ることから始まる。
GlobeHand Projectは、これからも日本とドイツのハンドボールをつなぎ、選手たちが世界の基準に触れられる環境を作っていきたいと考えています。
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