シュートが上手い。フェイントが鋭い。得点力がある。
ハンドボールでは、こうした攻撃力の高い選手が注目されることが多くあります。
しかし、海外のハンドボールに目を向けると、一つの疑問が生まれます。
「攻撃が上手いだけで、世界のクラブから評価されるのだろうか?」
GlobeHand Projectでは、ドイツへのChallenge Tourや現地クラブとの交流を通じて、さまざまな選手たちのプレーを見てきました。
そこで感じるのは、攻撃を得意とする選手は世界中に星の数ほど多くいるということです。
もちろん、圧倒的な攻撃力があれば、それだけでチームに必要とされる選手もいます。
しかし、多くの選手にとって、海外で評価される可能性を広げるのは、攻撃力だけではありません。
ディフェンスでも戦えること。そして、攻守の切り替えに対応できること。
今回は、ドイツの指導者ヴェリミル・ペトコビッチ氏から聞いた「スピードハンドボール」という考え方も踏まえ、世界で求められる選手像について考えたいと思います。
目次
- 攻撃が得意な選手は、世界にたくさんいる
- なぜディフェンスができる選手は評価されるのか
- 時代はスピードハンドボールへ
- オフェンス専門の選手は必要ないのか?
- ディフェンス力は一朝一夕には身につかない
- だからこそ、10代から世界を知ってほしい
- 世界で必要とされる選手になるために
攻撃が得意な選手は、世界にたくさんいる

日本の育成年代では、得点力のある選手が高く評価される場面が少なくありません。
試合で何点取ったのか。どれだけ鮮やかなシュートを決めたのか。どんなフェイントで相手を抜いたのか。
最近はSNSやYoutubeでもフェイントやシュートの切り抜き動画で溢れかえっており、そういった派手なプレーに目が行きがちです。
もちろん、攻撃力はハンドボールにおける大切な能力です。
しかし、海外の選手たちと同じコートに立つと、攻撃が得意な選手が決して珍しくないことに気づきます。
身体が大きく、シュートが強い選手。スピードのある選手。高い技術を持つ選手。独創的なプレーができる選手。
世界には、さまざまな攻撃の武器を持った選手がいます。
その中で、自分がチームに必要とされるためには、何が求められるのでしょうか。
私は、そこで重要になる能力の一つがディフェンスだと考えています。
なぜディフェンスができる選手は評価されるのか

例えば、攻撃では得点できるけれど、ディフェンスでは相手に簡単に突破されてしまう選手がいたとします。
一方、攻撃力は同程度でも、ディフェンスでも身体を張り、チームの約束事を理解し、相手の攻撃を止められる選手がいたらどうでしょうか。
もちろん、実際の選手評価はポジションやチーム戦術によって異なります。
それでも、攻守の両面で貢献できる選手は、監督にとって起用の選択肢が広がります。
ディフェンスで求められるのは、単に身体が大きいことや、力が強いことだけではありません。
- 相手の動きを予測する力
- 適切なポジショニング
- 味方と連携して守る力
- 身体接触の中でもバランスを保つ力
- 相手に簡単に突破されない粘り強さ
- 守備から速攻へ素早く切り替える力
こうした能力は、チーム全体の安定感にもつながります。
「自分が得点すること」だけでなく、「チームが勝つために何ができるか」。
海外でプレーすることを目指すなら、この視点を持つことが大切だと思います。
時代はスピードハンドボールへ

GlobeHand ProjectのSummer Campで指導していただいた、ドイツの名将ヴェリミル・ペトコビッチ氏。
ペトコビッチ氏との会話の中でも印象に残っているのが、現代ハンドボールのスピードについての話です。
ハンドボールは、ますますスピードが求められる競技になっています。
得点した直後に素早くリスタートする。ボールを奪った瞬間に速攻へ移る。攻撃が終われば、すぐに守備へ戻る。
攻撃と守備が、絶え間なく入れ替わっていきます。
このようなハンドボールでは、攻守の切り替え、いわゆるトランジションへの対応が重要です。
ここで考えたいのが、攻撃だけを得意とする選手の起用です。
攻撃が終わるたびに選手を交代させようとしても、相手が素早く攻めてくれば、交代する余裕がないこともあります。
交代が間に合わなければ、守備の人数や配置が整わないまま相手の攻撃を受ける可能性があります。
また、コートに残った選手が守備に対応できなければ、相手に狙われることも考えられます。
ハンドボールの高速化は、選手一人ひとりに攻守両面での対応力を求めているのです。
オフェンス専門の選手は必要ないのか?

ここで誤解してほしくないことがあります。
オフェンス専門の選手が必要ない、という話ではありません。
実際に、世界のトップレベルでも、攻撃と守備で選手を交代させる戦術は使われています。
突出した攻撃能力を持ち、チームの得点に大きく貢献する選手には、攻撃に特化した役割が与えられることもあります。
ただし、それはチーム全体の戦術や選手構成があってこそ成立するものです。
海外挑戦を目指す育成年代の選手が、最初から「自分は攻撃専門だから守備はできなくてもいい」と考えてしまうのは、もったいないと思います。
なぜなら、守備でも貢献できれば、起用される可能性や役割の幅を広げられるからです。
攻撃の武器を磨きながら、ディフェンスでも信頼される選手を目指す。
それが、海外でプレーする可能性を広げる一つの方法だと考えています。
ディフェンス力は一朝一夕には身につかない

では、ディフェンスが苦手な選手は、どのように成長すればよいのでしょうか。
ディフェンスは、知識を得たり、動きを覚えたりするだけで完成するものではありません。
相手の動きを読み、身体を使い、仲間と連携しながら、実際の試合で経験を積み重ねる必要があります。
特に海外では、日本で普段対戦している選手とは異なる体格、身体の使い方、接触の強度に直面することがあります。
相手の力を正面から受け止めるだけでは守れない。
身体の大きな選手に対して、どの位置を取ればよいのか。
どのタイミングで接触し、どの方向へ相手を誘導するのか。
こうしたことは、繰り返し経験し、試行錯誤する中で身についていきます。
もちろん、日本国内でもディフェンス力を高めることは十分に可能です。
正しい姿勢やフットワーク、予測、チームディフェンスなど、日頃の練習で取り組めることはたくさんあります。
ただ、海外の選手と実際に対戦してみなければ気づきにくい課題もあります。
ディフェンスは、異なる相手と戦い、経験を積み重ねることで成長していく能力でもあるのです。
だからこそ、10代から世界を知ってほしい

私は、海外でプレーすることを目指す選手には、できるだけ若いうちから世界のハンドボールに触れてほしいと考えています。
それは、早く海外へ移住した方がよい、という意味ではありません。
10代のうちに、世界の選手たちがどのような強度でプレーしているのか、何を求められているのかを知ってほしいのです。
例えば、海外の選手と対戦して、ディフェンスで簡単に突破されてしまったとします。
その経験は、決して失敗だけではありません。
なぜ守れなかったのか。何が足りなかったのか。どんな身体の使い方をすればよかったのか。
自分の課題が具体的になれば、日本に帰ってからの練習も変わっていきます。
これこそが、私たちがChallenge Tourを通じて選手たちに経験してほしいことの一つです。
海外で活躍することだけが目的ではありません。
世界を知り、自分の現在地を知り、その経験を次の成長につなげる。
その積み重ねが、将来の海外挑戦に向けた大きな準備になると考えています。
世界で必要とされる選手になるために

今回のテーマは「攻撃が上手いだけでは、世界で評価されないのか?」でした。
攻撃力は、選手にとって大きな武器です。
しかし、その武器だけに頼るのではなく、ディフェンスでもチームに貢献できる選手になれば、海外での可能性はさらに広がるはずです。
得点する力。守る力。攻守を素早く切り替える力。そして、チームのために戦う力。
世界で必要とされる選手になるためには、こうした能力を長い時間をかけて育てていくことが大切です。
世界で戦うために必要なのは、得点できる技術だけではない。
攻撃でも守備でも、チームに必要とされる選手になること。
そして、その基準を知るためにも、若いうちから世界のハンドボールに触れてほしい。
GlobeHand Projectは、これからも日本の選手たちが世界を知り、新しい可能性に挑戦できる環境を作っていきたいと考えています。
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今回の記事は、海外挑戦を考えるためのシリーズ第3弾です。これまでの記事もぜひご覧ください。
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