「将来、ドイツでハンドボールをしたい?」
中学生にそう聞いても、 すぐに答えられなくて当然だと思います。
ドイツでプレーしたこともない。
ドイツで生活したこともない。
海外のクラブがどんな場所なのかも、 そこで同年代の選手たちがどんな毎日を送っているのかも知らない。
知らないものについて、 「将来やりたいか?」と聞かれても、 答えを出すことはできません。
だから、私たちがChallenge Tourで大切にしている考えがあります。
「知らないものは、選べない。」
海外へ行くこと自体が目的ではありません。
世界を見ることで、 今まで知らなかった選択肢を知る。
そしていつか、 自分で自分の道を選べるようになる。
今回は「世界へ行く前に、僕たちが学ぶこと。」シリーズの最終回として、 スポーツを通じて世界を見ることと、 自分の将来を考えることについて書いてみたいと思います。
目次
- 1. 25歳の自分を想像できますか?
- 2. ハンドボールの道は一つではない
- 3. 「ドイツへ行く=海外プロ」ではない
- 4. 日本に残ることも立派な選択肢
- 5. 知らないものは、選べない
- 6. 13〜15歳で答えを決める必要はない
- 7. 答えではなく「問い」を持って世界へ
1. 25歳の自分を想像できますか?

Challenge Tourの事前講座で、 選手たちにこんなことを考えてもらいます。
「25歳になったとき、自分はどんな生活をしていたい?」
どこに住んでいるでしょうか。
ハンドボールを続けているでしょうか。
プロ選手になっているでしょうか。
会社で働きながら競技を続けているかもしれません。
海外で生活しているかもしれません。
指導者になっているかもしれません。
あるいは、 ハンドボールとはまったく違う仕事をしているかもしれません。
もちろん、中学生の今、 答えを決める必要はありません。
むしろ大切なのは、 「自分の人生には、どんな選択肢があるんだろう?」 と考え始めることだと思います。
2. ハンドボールの道は一つではない

スポーツを続けていると、 いつの間にか目の前の大会や進路だけが 「将来」に見えてしまうことがあります。
小学生なら、中学校。
中学生なら、高校。
高校生なら、大学や社会人。
もちろん、 目の前の目標に全力で取り組むことは大切です。
でも、その先にはもっと多くの道があります。
- 日本のトップレベルでプレーする
- 海外のクラブへ挑戦する
- 仕事をしながらハンドボールを続ける
- 指導者としてスポーツに関わる
- 海外で仕事をする
- 競技経験を別の仕事に生かす
- ハンドボールとは違う世界へ進む
どれか一つが「正解」なのではありません。
大切なのは、自分がどんな人生を送りたいのか。
ハンドボールは、 その人生を考える一つのきっかけにもなります。
3. 「ドイツへ行く=海外プロ」ではない

GlobeHand Projectがドイツでの経験を提供していると、
「海外プロを目指している選手のための活動ですか?」
と思われることがあります。
もちろん、 本気で海外プロを目指す選手が挑戦することも大歓迎です。
しかし、 Challenge Tourの目的は、 全員をドイツのプロ選手にすることではありません。
海外へ行けば、 言葉が通じないことがあります。
文化も違います。
スポーツの仕組みも違います。
自分から話しかけなければ、 何も始まらない場面もあります。
そして、 日本では当たり前だったことが、 まったく当たり前ではないことにも気づきます。
そうした環境に自分を置くことで、
「自分は何ができるんだろう?」
「自分は何を知らないんだろう?」
「自分はこれから何をしたいんだろう?」
と考える。
そこにも、 海外へ挑戦する大きな価値があります。
4. 日本に残ることも立派な選択肢
海外挑戦について発信していると、 どうしても
「海外へ行く方がすごい」
「ドイツでプレーする方が上」
という話に見えてしまうことがあります。
しかし、私たちはそう考えていません。
日本には日本の環境があります。
日本のトップレベルで競技する道もあります。
仕事とスポーツを両立する道もあります。
家族や友人の近くで生活しながら、 好きなスポーツを続ける生き方もあります。
海外で生活することにも、 言葉、文化、契約、生活環境など、 さまざまな難しさがあります。
だから、
「海外へ行くか、日本に残るか」ではなく、 自分がどんな人生を送りたいのか。
そこから考えてほしいと思っています。
5. 知らないものは、選べない

ただ、一つだけ問題があります。
人は、知らないものを選ぶことができません。
日本の環境しか知らなければ、 その中にある選択肢から将来を考えます。
それが悪いわけではありません。
でも、 一度世界を見たらどうでしょう。
ドイツのクラブを見る。
海外の同年代と一緒に練習する。
違う言語でコミュニケーションを取る。
現地の学校を見る。
地域の人たちがスポーツを楽しんでいる姿を見る。
日本とは違うキャリアを歩んでいる選手と出会う。
すると、
「こんな生き方もあるんだ。」
という選択肢が一つ増えます。
そして日本へ帰ってきて、
「やっぱり自分は日本で挑戦したい。」
と思うかもしれません。
それも、とても大切な答えです。
世界を見ることは、 海外へ行くことを決めるためではありません。
自分で選べるようになるために、 選択肢を増やすこと。
それが、私たちが考える海外経験の価値です。
6. 13〜15歳で答えを決める必要はない

Challenge Tourに参加する選手は まだ中学生です。
13歳、14歳、15歳で、 自分の人生を決める必要はありません。
「ドイツでプロになる」
と決める必要もありません。
「日本でプレーする」
と決める必要もありません。
今必要なのは、 答えを決めることではなく、
たくさんのものを見て、 たくさんの人と出会い、 自分なりに考えること。
その経験が、 高校を選ぶとき、 大学を選ぶとき、 仕事を選ぶとき、 競技を続けるか考えるとき、 いつか自分自身の判断材料になるかもしれません。
だからこそ、 育成年代で世界を見ることには意味があると考えています。
7. 答えではなく「問い」を持って世界へ
私たちはChallenge Tourの選手たちに、 ドイツについてすべて教えてから 出発してほしいとは思っていません。
むしろ、 分からないことがあっていい。
疑問があっていい。
だから出発前に、 選手たちにはこんなことを考えてもらいます。
「今回のChallenge Tourで、 自分の目で見たり、 現地の人に聞いたりして、 確かめたいことは何?」
たとえば、
- なぜドイツの選手は自分から練習に取り組むのか?
- 学校とハンドボールをどう両立しているのか?
- 自分のプレーはドイツでどこまで通用するのか?
- なぜ地域の人がクラブを応援しているのか?
- 海外でプロになるには何が必要なのか?
人によって問いは違っていい。
大切なのは、 自分自身の「問い」を一つ持ってドイツへ行くこと。
そして、
自分の目で見る。
自分の耳で聞く。
自分で感じる。
帰国したときに、 出発前とは少し違う考えを持っているかもしれません。
それでいいと思います。
世界へ行く前に、僕たちが学ぶこと。
全3回にわたって、 Challenge Tourの事前講座で 選手たちと考えていることを紹介してきました。
第1回は、
「なぜドイツはハンドボールが強いのか?」

競技力だけではなく、 地域クラブ、観客、家族、スポンサー、 ボランティアまで含めた スポーツ文化について考えました。
第2回は、
「日本とドイツ、スポーツの仕組みは何が違う?」
学校とスポーツ、 地域クラブ、 年代を超えてスポーツに関わる仕組みについて考えました。
そして第3回は、
「世界を見ることと、自分の将来を考えること」
について考えました。
この3回に共通しているのは、 ドイツの方が優れていると伝えることではありません。
海外へ行くことを 正解にすることでもありません。
知らなかった世界を知る。
自分の当たり前を一度疑ってみる。
そして、自分で考えて、自分で選ぶ。
そのために、世界を見る。
Challenge Tourは、 単にドイツでハンドボールをするための 9日間ではありません。
出発する前から学び、 現地で挑戦し、 帰国してから自分の経験として残していく。
世界へ行く準備ではなく、
世界へ挑戦する準備。
私たちは、そんな時間も含めて Challenge Tourだと考えています。
GlobeHand Project
世界のスポーツ文化・育成を日本へ。
「選ばれたから世界へ行く」のではなく、
「世界を目指すから、挑戦する。」

