少し変な話かもしれません。
私は、ハンドボールの競技経験者ではありません。
それなのに今、ドイツへ中学生を連れて行ったり、ドイツの指導者を日本へ招いたり、海外の育成について発信したりしています。
GlobeHand Projectを始めてから、ずっと心のどこかに引っかかっていたことがありました。
「ハンドボールをやってきていない自分が、経験豊富な指導者の方たちに何かを言っていいのだろうか」
ということです。
実際、以前の僕はかなり遠慮していました。
全国レベルで指導してきた人。
長年ハンドボールに携わってきた人。
トップレベルでプレーしてきた人。
そんな方たちを前にすると、
「自分はハンドボール未経験だから」
という気持ちが、どこかにありました。
でも最近、少し考え方が変わりました。
というより、ようやく自分の役割が分かってきたのかもしれません。
私がトップ指導者になる必要はない

私が、世界トップレベルの指導者と同じように技術や戦術を教える必要はありません。
当然できません。
私がペトコビッチ氏の代わりに、世界トップレベルの戦術を語る必要もない。
ドイツで長年選手を育ててきた指導者と、同じ経験を持っているふりをする必要もない。
それは、その道を歩んできた人たちに任せればいい。
では、自分には何ができるのか。
今は、かなり明確になってきました。
世界の優れた指導者や育成現場へ実際に足を運び、そこで見たもの、聞いたこと、感じたことを、日本へつなぐこと。
それが私の役割なのだと思っています。
分からなかったから、自分の目で見に行った

そもそも、僕が海外へ目を向けた理由もシンプルでした。
分からなかったからです。
どうすれば子どもたちはもっと成長できるのか。
日本で当たり前に行われていることは、本当に当たり前なのか。
世界では、育成年代の子どもたちをどう育てているのか。
分からない。
だったら、見に行ってみよう。
最初は、それくらいでした。
ドイツへ行って、実際にクラブを見る。
指導者に話を聞く。
選手たちの練習を見る。
試合を見る。
クラブの人たちと話す。
子どもたちがどんな環境でスポーツをしているのかを見る。
すると、当然ですが、日本とは違うことがたくさんありました。
練習方法だけではありません。
指導者と選手の関係。
クラブのあり方。
育成年代に対する考え方。
勝利との向き合い方。
スポーツと日常生活との距離。
「海外ではこんな練習をしている」
という表面的な話だけではなく、
なぜ、こういう育て方になるのだろう。
というところに興味を持つようになりました。
練習方法だけでは説明できないものがあった

ドイツのスポーツを知ろうとすると、ハンドボールだけを見ていても分からないことがあります。
なぜ地域にクラブがあるのか。
なぜ学校とは別にスポーツをする場所があるのか。
なぜ指導者と選手の関係が日本とは違うのか。
なぜ自分で考えることを求められるのか。
そこを掘っていくと、
歴史。
教育。
社会。
地域。
文化。
人々の価値観。
いろいろなものにつながっていきます。
私自身、もともと教員として子どもたちと関わってきました。
だからなのか、単に「強い選手をどう作るか」だけではなく、
「どんな環境にいると、子どもはどう育つのか」
ということに興味があります。
ハンドボールの技術論だけなら、僕より詳しい人はたくさんいます。
でも、
ドイツへ実際に行き、
現地の人たちと関係をつくり、
子どもたちを連れて行き、
ドイツの指導者を日本へ招き、
その両方を自分の目で見ながら、
「なぜ違うのだろう」
と考える。
これは、自分だからできることなのかもしれない。
少しずつ、そう思うようになりました。
世界トップレベルの人から、直接聞けばいい

2026年夏。
GlobeHand Projectでは、ヴェリミール・ペトコビッチ氏とスタニスラフ・ジュコフ氏を日本へ招き、サマーキャンプを開催しました。
世界トップレベルで長年指導してきた人が、目の前で日本の中学生を指導する。
私にとっても、ものすごく学びの多い時間でした。
そこで改めて思いました。
私自身が「世界の育成はこうです」と、何でも知っている人になる必要はない。
分からなければ、
本当に知っている人に聞けばいい。
なぜ、この練習をするのか。
なぜ、ここで答えを教えないのか。
なぜ、この年代でこれを大切にするのか。
そして、その答えを日本の指導者や保護者、選手たちへ届ければいい。
私が「先生」になる必要はありません。
世界と日本の間に橋を架ける人になればいい。
そう考えるようになってから、「ハンドボール未経験」ということへの引け目は、以前よりずっと小さくなりました。
未経験だからこそ、聞けることもある
むしろ最近は、未経験だったことにも意味があったのかもしれないと思っています。
分からないから聞く。
当たり前を知らないから、
「なぜですか?」
と聞く。
競技経験者にとっては当たり前すぎて疑問にもならないことが、僕には分からない。
だから調べる。
現地へ行く。
専門家に聞く。
もちろん、競技経験がないことを強みにすり替えるつもりはありません。
経験者にしか分からないことは、間違いなくあります。
だからこそ、そこは経験のある人たちから学ぶ。
大切なのは、
自分が何を知っていて、何を知らないのかを分かった上で、自分にできる役割を果たすこと。
今はそう考えています。
GlobeHandは「海外へ連れて行くだけの会社」ではない

GlobeHand Projectを始めた当初は、私自身も「ドイツ遠征をするプロジェクト」という感覚が強かったと思います。
でも、実際に続けていく中で、それだけではないと感じるようになりました。
チャレンジツアーで、日本の中学生をドイツへ連れて行く。
サマーキャンプで、世界の指導者を日本へ招く。
指導者に話を聞く。
トレーニングを記録する。
日本の選手がどう反応するのかを見る。
現地のクラブ文化を知る。
そこで得たものを、また日本へ持ち帰る。
この往復を繰り返していく。
だから、これからGlobeHand Projectが目指したいのは、
「世界のスポーツ文化・育成を日本へつなぐ存在」
です。
海外遠征を売ることが目的ではありません。
ドイツのやり方をそのまま日本へ持ってくることでもありません。
世界には、こんな考え方がある。
こんな育て方がある。
こんな環境がある。
それを知った上で、
「では、日本で何ができるだろう」
と一緒に考える。
そんな役割を担いたいと思っています。
私自身も「何者でもないところ」から始まった

考えてみれば、GlobeHand Projectが大切にしている考え方は、自分自身にも当てはまるのかもしれません。
ハンドボール経験者ではない。
海外スポーツビジネスの専門家だったわけでもない。
ドイツとの特別なコネクションが最初からあったわけでもない。
それでも、
「世界を見てみたい」
「もっと知りたい」
「日本の子どもたちにも、この環境を見せたい」
と思って動き始めました。
最初から何かを持っていたから始めたわけではありません。
分からなかったから、世界を見に行った。
そして一歩ずつ動いていたら、人と出会い、次の扉が開き、今につながっています。
だから私は、子どもたちにも同じことを伝えたいのだと思います。
まだ何者でもなくても、世界を目指していい
全国大会に出ていない。
選抜に選ばれていない。
強豪チームに所属していない。
今はまだ身体が小さい。
まだ技術も足りない。
それでも、
「世界を見てみたい」
と思っていい。
もちろん、世界へ行くためには努力が必要です。
最低限の競技力も必要です。
仲間と生活するための人間性も必要です。
でも、
「もっと上手くなって、実績を残して、誰かに選ばれてから世界を考える」
という道だけでなくてもいい。
選ばれたから世界へ行くのではなく、世界を目指すから挑戦する。
世界を目指したことで、日々の行動が変わる。
世界を見たことで、自分の基準が変わる。
知らない環境へ飛び込んだことで、今まで知らなかった自分に出会う。
そんな成長もあると思っています。
だから、GlobeHandをやっている

私は、世界トップレベルのハンドボールを教えることはできません。
これからも、できるふりをするつもりはありません。
その代わり、
世界へ行く。
自分の目で見る。
本当に知っている人に聞く。
関係をつくる。
日本の子どもたちをそこへつなぐ。
世界の指導者を日本へつなぐ。
そして、そこで得た一次情報や経験を、日本の選手、保護者、指導者へ届ける。
それならできる。
そして、それがGlobeHand Projectの役割だと思っています。
私自身が、
「分からないから、世界を見に行った」
ところから始まりました。
だからこそ、
まだ何者でもない子どもたちにも伝えたい。
まだ何者でもなくても、世界を目指していい。
世界を目指したいと思ったその瞬間から、挑戦は始められる。
その最初の扉をつくり、
世界と日本をつないでいく。
だから私は、GlobeHand Projectをやっています。

